アルドの冒険 特別編

2013/09/17

プロローグ

 ゴール王国の片隅、 木々に囲まれた貧相な道を走る一台の馬車。 馬車に乗るは医者と、 三人の若者たち。
 今、町では原因不明の奇病が広まりつつあった。 この馬車は、その病気を治す術を知る医者を運ぶために用意されたものである。
 医者はまだ、うら若き女性であった。 他の三人の若者は、それ以上に若かった。 医者を連れてくる手はずを整えたのは、この三人組である。
 一人は、立派な鎧に身を包んだ青年。名前はアルド(サンプル『勇者志望』)。 まだ着慣れぬようで、どこかぎこちない。 移り変わる景色を、ただ散漫に眺める。
 一人は、ともすれば少年にも見えるボーイッシュな少女。 呼び名はシオ(サンプル『蟻地獄』)。 幾つものポーチ等を身につけ様々な小道具を常備する彼女は、 御者席から馬車を走らせる。
 一人は、まだあどけなさが残る容貌ながら三人の中では最年長の女性。 その名はサラ(サンプル『シェイプチェンジャー』)。 どういうわけか馬車の屋根の上に体を横たえ、 スヤスヤと居眠りをしてる。
 あてどもなく旅を続け、成り行きで同行している彼らにはまだ、 目的はない。 今回の件は、世の為人の為、路銀稼ぎのために、 あらゆる病気を治すことができるとの噂を持つ 医者(魔 女) のイレーヌを森の中へと迎えに行く帰りであった。

 「……?」

 御者をやっていたシオは、ふと訝しげに首をかしげて馬車を止める。 何かあったのか、とのアルドの疑念の声や医者の困惑の視線 (サラは未だ夢の世界の住人であった) を尻目に、 軽快に飛び降りた彼女はゆっくりと馬車の前方へ進む。


 GMは御者を務めていたシオは前方をよく注視していると判断して、 『感覚/精神』による知覚判定を要求した。 更に対象は罠の類であるため、〈罠師〉技能の使用も許可する。
 このとき、蟻地獄の関係パラメータは以下の通りなので、 [AP]+〈罠師〉の 7 つのダイスを振って判定を行う。

 【感覚係数】 4
[AP/精神] 4
〈罠師〉 3

 判定の結果、出目は以下のようになった。

  [6] [6] [1] [2] [6] [2] [6] 成功: 4

 特に修正はないので難易度は 4。 4以上の出目の数は 4 つなので、威力ダイスは 4。 これに【感覚係数】を乗算して、 達成値は 4 * 4 = 16、成功度は 4 という結果になった。
 GMは十分な達成値であると判断し、 シオに前方に落とし穴を発見したことを伝える。


 そして、 おもむろに手に持つハルバードの柄で足元を叩き出す。 すると、なんとしたことか。 叩かれた地面は崩れ落ち、 そこには一人くらいなら入れそうな規模の、 底が浅くとも広めの穴が生まれた。

 「落とし穴ぁ!?」

 驚くアルド。 しかしシオはそれには反応せずただ一言、しまったと呟く。
 道の横合いから起こるメキメキという異音。 すかさずシオが飛び退くや否や、 そこに一本の木が音を立てて倒れこむ。
 大きな質量が地を叩いた影響で土埃が舞い上がり、 それが収まるまでのわずか間、 呆気に取られた馬車の乗員たちは一言も発することができなかった。

 「ふぅ……まさか落とし穴だけじゃなくて、 こんな仕掛けまで用意してるなんてね。 間違いなく言える。 これを仕掛けた連中は、暇人だ」


 馬車の上、移動中という条件から鑑みて、 先ほどの達成値では落とし穴は見抜けても連動する罠までは見えなかったのだ。
 それでも蟻地獄は〈第六感〉を持っていることもあり、 本来なら叩く前に気づいて然るべきなのだが …… 今回はうっかり罠を発動させてしまったのだ。 ということにしておこう。


 「いや、おい。それよりどうするんだよ、これ……前に進めないぞ」

 誤魔化すように遠くを見やりながら真剣な面持ちで述懐するシオに、 半眼で突っ込みを入れるアルド。
 この罠は、落とし穴で引っ掛けた馬を木で押しつぶす仕掛けだったのだろう。 そしてそれが叶わなくとも、倒れこんだ木は道を塞ぐ。
 ここを引き返しては大回りになってしまい、 とても現実的ではない。 そう、彼らはここで予期せぬ足止めを食らってしまったのだ。 罠を仕掛けた者の意図通りに。

発破

 町へとたどり着くには、この道を進むしかない。 この道を進むには、邪魔な倒木を排除しなければならない。 倒木のサイズはそれなりに大きく、 一行の人数で対処にするには少しばかり時間がかかりそうであった。
 そこで彼らが取った手段は 「うん、爆破しようか」である。 提案者であるシオの得意技、それは様々な罠を仕掛けること。 そして彼女は奥の手として、幾ばくかの爆薬を所持していた。
 入手するのに手間も金もかかる品であるが、 今は何より時間が惜しい。 手っ取り早く発破により道を開くことを優先したのである。

 やることが決まれば、後は作業を進めるだけである。 安全のため馬車を少し下がらせてから、 シオは早速、倒木に取り付いて爆弾の設置を始めた。


 ただ設置するだけなら、別に難しい作業でもない。
 ここは判定不要とし、ただ作業の完了までに1時間ほどかかるとした。


 その間、他の面々は手持ち無沙汰である。 一度は眠たげな目をこすりつつ起きだしたサラも、 屋根から降りてくることもなく再び居眠りを始めた。 アルドとイレーヌは、雑談を交わして時間を潰し出す。

 「何か大変なことになってしまいましたね」

 「ええ……あれは、人が仕掛けたものですよね? いったい誰が何のためにこんなところに……」

 「大丈夫。どんなことがあったって、 俺たちがついているんだからヘッチャラですよ!」

 「まあ……ふふ、ありがとうございます」

 「へへ……」

 「あのさー。君等さ、いちゃつくんなら他所でやってくれない?」

 「誰がいちゃついてるって言うんだよ! ……って、作業はもう終わったのか?」

 しばし和やかなムードで進んだ会話も、 しらけたような台詞とは裏腹に緊迫した面持ちのシオが戻ってきたことで 終わりを告げる。

 「何か、あったのですか?」

 「アルドよりもお医者さんのイレーヌの方が察しがいいね。 ……何かが近づいてくるよ、準備して」


 作業時間中に近づいてくる何者かを感知できるか、 GMは〈第六感〉ありで『感覚/精神』での判定を要求した。
 アルドは【係数】 3 のダイス数 2、 シオは【係数】 4 のダイス数 6、 サラは【係数】 4 のダイス数 6 で判定を行う。 ただし、サラは居眠りしているので難易度は 6 とする。
 各々の出目は以下の通り。

 アルド [3] [3]成功: 0
シオ[4] [6] [4] [3] [1] [6] 成功: 4
サラ[5] [2] [6] [3] [4] [4]成功: 1

 結果、達成値はアルドは 0、シオは 16、サラは 4 となった。
 今回の目標値は、接近側の隠密達成値となる。 接近側のデータは簡易キャラクター『軽装歩兵』相当としているため、 [AP] 5 と【技】 2 で判定、威力ダイスが 3 の達成値は 6 となった。
 つまり、達成値で接近側を上回り見事に気づいたのは、シオ一人となる。


 最後の一言はそっと付け加えるように小声で残し、 当人は馬車の中から自分の武装を持ち出す。 慌てて立ち上がりったアルドは腰に手をやり、 キョロキョロと辺りを見渡し始める。 一方、サラはまだ寝ていた。

襲撃

 「へっへっへ。ご機嫌よう、お嬢ちゃん方よう」

 ガサガサと草を掻き分け、 森の中から姿を現すは4人の男。 薄汚れた剣と革鎧で武装し、 不潔でボサボサな頭と近寄れば悪臭を感じそうなその装いは、 見るからに山賊なり野盗なりの類。

 「この罠を仕掛けたのはお前たちか!」

 「さあ? 知らねぇなぁ。証拠もなしに決めつけちゃあいけねぇぜ。兄ちゃんよう」

 どう考えても穏当に済みそうにはない。 そう判断し、剣を抜いたアルドは鋭く問いかけの声を発するも、 野盗らはニヤニヤと薄笑いを浮かべるばかりでマトモに取り合おうともしない。
 見え見えの韜晦をする野盗らに、歯ぎしりし悔しがるアルド。 打って出るべきか逡巡してる間に、彼らは更に言い募る。

 「ま、俺たちも鬼じゃねーしぃ? 言いがかりの詫びは、そっちの姉ちゃんを差し出せば許してやるぜ」

 「一人が犠牲になりゃ、他の全員が助かるんだ。 考える余地はねーよなぁ」

 「本当なら、全員身ぐるみ剥いで売り払うところなんだけどな。 いや、兄ちゃんたちは運がいいぜ!」

 「ふざけ……!」

 ドス

 イレーヌの身柄を要求し、 口々に好き放題わめき立てる野盗たち。
 思わずアルドが激昂し怒鳴りつけようとしたその瞬間、 野盗の一人の額に矢が突き刺さる。

 「な……て、てめぇ!?」

 「シオ!」

 「駄目だなぁ。こういう連中の話は、聞くだけ無駄なんだよ。先手必勝、ってね」

 野盗たちが現れるより前に、馬車の中でこっそり準備していたクロスボウ。 シオは彼らが会話に気を取られている隙に、それを抜き打ちで発射したのだ。
 不意打ち気味に飛来する矢に野盗らは反応することもできず、うち一人の額に直撃。 為す術もなく、ただの一撃で地に沈んでしまった。


 シオが攻撃を試みたため、 ここからは戦闘時のラウンド処理に移行する。
 各キャラクターの[IN]は以下の通り。

 アルド  4
シオ 8
サラ 8
野盗 4

 最も早いのはシオとサラであるので、 シオの攻撃に妨害は入らない。 ついでに、シオ以外は未だ戦闘態勢に入っていなかったこともあり、 特に行動権を取得しようとはしなかった。
 シオは[AP/身体] 7 のうち 1 消費して矢をセット、 更に 1 消費してクロスボウを巻き上げる。 この時点で残り[AP/身体]は 5。 これを全てつぎ込んで、野盗の一人に矢を撃ち込んだ。

  [2] [4] [5] [5] [5] 成功: 4

 【命中係数】が 3、【射撃系数】が 4、[攻撃力]が 8 なので、 判定の結果の威力ダイス 4 を掛けて、 命中値/攻撃値/攻撃力は 12/16/24 となる。
 一方、攻撃された野盗は本来なら防御判定を行うのだが、 今回のケースでは  「シオは唯一人事前に気づき、いち早く迎撃の準備をした」こと、  「野盗らがこちらを侮り、油断しきっている」こと、  「馬車を利用することで隠れて準備できた」こと、  「どうせ雑魚」であることなどを考慮し、 そのまま無防備に受けることとする。
 結果、最終攻撃力から[防御力]の 4 を引いてダメージは 20。 [HP]は 15 なので、この一撃で野盗の一人は昏倒した。


 「ちくしょうめ、ぶっ殺してやる!」

 「女は殺すなよ! この礼をタップリとしてやる!」

 「勝手なことばかり言うなぁ!」

 こうなってはもう収まりはつかない。
 野盗らはいきり立って武器を手にアルドやシオたちに斬りかかり、 3対2の乱闘が始まった。


 シオ、撃ち終わったクロスボウを捨て(消費0)、 代わりに用意してあったハルバードを手に取り (〈槍・長柄〉 1 消費)行動終了。
 ずっと居眠りしていたサラ、 戦闘開始と同時に目を覚ます。 本文では描写していないが、 実は反対側からも 2 人の野盗が出現していた。
 サラはその片割れに、ショートボウで狙いをつける。 《速射》の効果により、矢の準備に消費APはなし。 [AP/精神] 6 を全て、[MP] 2 を消費して《狙撃》を使用。

  [6] [6] [3] [4] [1] [2]  成功: 3

 達成値は 3 * 4 = 12 で、 この値だけ次の行動時に攻撃値にプラスされる。
 《狙撃》の効果で[IN]が 3 減少したが、まだサラが早い。 続けざまに狙いをつけたショートボウから、 〈弓〉 2 と[AP/身体]を 3 消費して矢を発射する。

  [3] [4] [4] [2] [3] 成功: 2

 結果、命中値/攻撃値/攻撃力は 6 / (8 + 12) / 24 。
 これに対し野盗は[AP] 5 を消費して全力で防御。

  [3] [5] [3] [6] [2]  成功: 2

 【技】 2 の[防御力] 4 なので、 2 * 2 + 4 = 8 点減少 (簡易キャラクターなのでダメージ軽減しかない) して、16 点のダメージを受けた。
 これで二人目の野盗が沈没。
 だが、まだサラの行動は終わらない。 続けざまに残り[AP/身体] 3 を消費してもう片方の野盗を射撃。

  [6] [3] [4]  成功: 2

 命中値/攻撃値/攻撃力は 6/8/12。
 それに対する野盗の防御は

  [5] [4] [1] [4] [1]  成功: 3

 2 * 3 + 4 = 10 点を軽減して 2 点ダメージ。
 ダメージとしては僅かだが、 まんまと足止めに成功した。


 「おい、後ろからも来てるぞ」

 やることがないからとずっと昼寝を続けていたサラも、 流石の物々しい雰囲気に起きだしていた。
 そしてすぐさま事態を察し、 誰からも警戒されていない状況を活かして狙いをつけ、 あっさりと背後から来ていた2人の野盗のうち1人を倒してしまった。

 「こっちは手一杯だ、そっちはそっちで何とかしてくれ!」

 注意されたところで、 アルドの前には3人の野盗がいて、さすがに身動きが取れない。
 ハルバードを手に馬車の護衛に徹するシオを尻目に、 1人で野盗たちを抑えこむべく気合を入れる。


 アルドはもし野盗が自分を無視して馬車に向かうなら移動妨害をするつもりで、 行動を放棄。防御に徹する。
 これに対し野盗の3人はチャンスと見て、 一斉にアルドに攻撃を仕掛ける。

 [1] [4] [6] [2] [6] 成功: 3
[3] [4] [6] [6] [3] 成功: 3
[1] [5] [5] [3] [1] 成功: 2

 3人の攻撃はそれぞれ、 6/9/15、6/9/15、4/6/12 となった。
 これらの攻撃に対し、 アルドは1つ目を 〈盾〉 1 と[AP/身体] 2、 2 つ目を 〈刀剣〉 1 と[AP/身体] 2、 3 つ目を [AP/身体] 2 消費して防御する。

 [5] [2] [1] 成功: 1
[4] [2] [6]成功: 2
[3] [5]成功: 1

 結果はそれぞれ、 3/3/11、6/6/14、3/3/11。 ダメージは2つ目のみ『半減』し、 4 + 0 + 1 = 5。 [HP]が 5 点減少して残り 37、 更に微傷を 2 回で軽傷を負うに至った。


 「何だこいつ。3人がかりだってのにビクともしねぇっ」

 「慌てんな、傷はついてんだろ!」

 「俺一人じゃお前たち全員を倒すのは難しいけど、 もうちょっと我慢すればシオもサラも来る。 時間をかけるほどこっちに有利なのさ!」

 「ち、ちくしょう、怯むな。もう一回いくぞ!」

 明らかに、野盗はアルド1人に気圧されていた。
 背後から襲いかかった連中はサラに足止めされたのみならず、 既に1人やられている。 今は馬車の傍にいるシオも、 すぐにこちらに向かってくるだろう。 唯一、戦闘能力のないイレーヌは既に馬車の中に退避済みだ。
 このまま行けば順当に野盗たちを追い払える。 そうアルド達が思った瞬間に、それは現れた。

暴風

 「もうやめとけ。その連中の相手は、テメェらじゃあ無理だ」

 声が、響く。 軽薄な雰囲気を含みながらも、 それまでの野盗らとは全く違う重みを持つ声。
 姿を現したその声の主は、長大な剣を肩に担いだ、如何にも傭兵然とした男。 ヴェンタス(サンプル『テンペスト』)。 その隣には付き添うように、 やけに陰鬱な雰囲気の影が薄い、 ともすればそのまま影に沈み込んでしまうような不自然な存在感を持つ男。 カゲオ(サンプル『影男』)。
 どちらも、 そこんじょそこらのチンピラ風情とは明確に異なっていた。 間違いようもなく、腕利きであろう。 緊張の度合いを一段階ほど上げたアルドが、誰何の声を放つ。

 「誰だ! あんたも、こいつらの仲間か?」

 その声に含まれる重圧など意にも介さず、 悠然と歩み寄るヴェンタス。
 そして、十分に開けた場所まで進んでからおもむろに剣をブンブンと何度か振り、 構える。 並の人間では持ち上げることすら儘ならぬような剣を軽々と振り回し、 巻き起こる風圧はそれだけで周囲を威圧した。

 「その質問に、答える必要はあんのかい? どちらにしたって、俺は敵だぜ」

 ニヤリ、とアルドの方に笑い、挑発する。
 一瞬、気圧されそうになるも、 アルドは懸命に堪えて向き合い、剣を構える。

 「お前たちが何者であろうと、俺たちは決して負けやしない!」

 「くくく……いいねぇ。いーい目だ。さあ、楽しもうぜ! この“暴風”の剣、どこまで受けられるか試してやるよ」

 「“暴風”……だって? まさか、あいつっ!」

 「……知ってるのか? シオ」

 「すごい有名な傭兵だよ! 戦場であの長い剣を小枝のように振り回して敵兵をなぎ払う様子から、 \ruby{“暴風”}{テンペスト}のヴェンタスって呼ばれるようになったらしいさ」

 サラの疑問にシオが答える間も、 アルドとヴェンタスの距離は徐々に縮まり、 あと一歩で間合いに入るまでに至る。

 「ハッ、俺も有名になったもんだぜ。──おい、テメェらは下がってな。邪魔だ!」

 「チッ。しくじるんじゃねえぞ!」

 「ハハッ、残念だったな! お前らの命もこれでお終いさ。 大人しく オレらの言うことを聞いていれば死なずにすんだのにな!」

 口々に野次を飛ばしながらも、大人しく指示に従って逃げていく野盗たち。 アルドらは黙ってそれを見送る。 いや、見送るしかできなかった。 それだけ、ヴェンタスから受けるプレッシャーが強かったのだ。 余計なことに気を取られている暇は、もうない。
 そして、一拍の間を置いた後に猛然と動き出すヴェンタス。 その疾風怒濤の如き猛撃は、まさに暴風の二つ名に相応しいものであった。

死闘

第1ラウンド

HPMP IN AP(身/精)負傷
アルド37546 / 2軽傷
シオ33487 / 4無傷
サラ21386 / 6無傷
ヴェンタス36498 / 3無傷
カゲオ24398 / 5無傷

 アルドは先の戦いで傷を負った状態からスタート。 また諸事情により、カゲオの特技に《スティング》を追加しておく。
 一番[IN]が高いのはヴェンタスとカゲオ。 しかし彼らは味方同士であるため、厳密に決める必要はない。 ここはヴェンタスが先行することにする。
 なお、ここから先はラウンド内のフェイズが何番目かを表記するが、 実際のプレイ中にフェイズを数える必要は全くない。

《フェイズ1 / 行動権: ヴェンタス》

 「さーて、こっちのが数は少ねぇんだ。 弱いところから片付けさせてもらうぜ」

 ヴェンタス、[MP] 2 〈刀剣〉 3 [AP/身体] 3 を消費し、 《遠当》を使って馬車の上のサラを攻撃。 大きく振った剣から飛び出す衝撃波がサラを襲う。

  [6] [2] [2] [1] [6] [4] 成功: 3 結果: 12/12/21

 サラ、一か八かで全力回避。 全[AP/身体]を消費する。

  [3] [4] [6] [4] [3] [2] 成功: 3 結果: 12

 結果、飛来する衝撃波を見事に避けきることに成功した。 ただし、狭い馬車の上に居続けることはできず、 裏側に墜落する。
 落下ダメージを軽減するために 《体術》 2 を消費して受け身判定を行う。

  [3] [5] 成功: 1 結果: 4

 結果、4[m] 以下の高さならダメージは0となり、 問題なく屋根より降りることができた。

 「チッ、避けたか。まあいい、次いくぜ!」


《フェイズ2-4 / 行動権: ヴェンタス》

HPMPINAP(身/精)負傷
サラ21380 / 6無傷
ヴェンタス36295 / 3無傷

 ヴェンタスは振り下ろした剣を切り返すように、 間髪入れずにアルドに襲いかかる。
 [MP] 2 [AP/身体] 5 を消費し、 《インペイル》《ヘビーインパクト》を使用しての接近攻撃。

  [2] [6] [6] [5] [6] 成功: 4 結果: 16/16/25

 威力ダイス 4 なので、4[m] まで攻撃と同時に移動可能。 得物の射程は 2.5[m]で、問題なく攻撃成功。
 アルド、〈盾〉1[AP/身体]6を消費し、 《シールドガード》を使用して全力で防御する。

  [2] [4] [2] [2] [4] [6] [4] 成功: 4 結果: 8/12/16

 結果、ダメージは 9 点。 軽傷が入るが、既に軽傷を負っているので中傷に繰り上げ、 転倒する。
 アルドはヴェンタスの切り上げを盾で受け止めるものの、 抑えきれずに浮かび上がり、地べたに叩き伏せられてしまった。
 ヴェンタスはここで《体術》 2 を消費し、6[m] 後退 (移動は 1回につき 1フェイズ)。 行動を終了する。

《フェイズ5-7 / 行動権: カゲオ》

HPMPINAP(身/精)負傷
アルド28420 / 2中傷(転倒)
ヴェンタス36090 / 3無傷

 ヴェンタスの後は、[IN]の高いカゲオが行動権を取得した。
 カゲオは[MP] 2 〈隠密〉 2 を消費し、《陽炎》を使って隠密を試みる。

  [6] [1] 成功: 1 結果: 4

 何の遮蔽物もないのに、 カゲオの姿が影に溶けるかのように消えていく。
 だがシオはそれを許さない。 〈第六感〉 2 [AP/精神] 1 を消費して、隠密の看破を試みた。

  [2] [5] [1] 成功: 1 結果: 4


 「そんなもんじゃ、僕の目は誤魔化せないさ!」

 日頃から獲物や罠を見極めるために目を鍛えてるシオからは、 うまく隠れることができなかったカゲオ。 見破られたことに一片の動揺も見せず、 〈体術〉 2 を消費して 8[m] 移動、 一気にシオとの間合いを詰めた。

《フェイズ8-10 / 行動権: カゲオ》

HPMPINAP(身/精)負傷
シオ33487 / 3無傷
カゲオ24198 / 5無傷

 シオに密着するほど近づいたカゲオは、 手に持つダガーを素早く繰り出し、 シオの体の急所を狙う。
 カゲオ、〈刀剣〉 1 を消費し、 《フェンサーアーツ》《クリティカル》《スティング》を使用してシオを攻撃する。

  [6] 成功: 1 結果: 3/4/5

 シオは〈槍・長柄〉 2 を消費して防御を試みる。

  [4] [3] 成功: 1 結果: 3/3/6

 シオのハルバードの柄は、 問題なくカゲオのダガーを弾いた。
 だが、まだカゲオの攻撃は終わらない。 〈刀剣〉 1 を消費して再度攻撃。

  [0] 成功: 0 結果: 0/0/1

 失敗しても止まらない。 [AP/身体] 1 消費して攻撃。

  [6] 成功: 1 結果: 3/4/5

 このまま好き勝手にやらせてはたまらない。 シオは[MP] 1 〈AP/身体〉 2 を消費し、 《受け流し》を使っての防御を試みる。

  [4] [1] 成功: 1 結果: 3/3/6

 シオはダガーを捌いて行動権を奪取、 反撃する体勢を整えた。

《フェイズ11 / 行動権: シオ》

HPMPINAP(身/精)負傷
シオ33485 / 3無傷
カゲオ24197 / 5無傷

 何とか、ここから自分の流れに持ち込みたいところ。 シオは残った力を込めて、 [AP/身体] 5 を消費してハルバードを振りぬく。

  [4] [6] [5] [5] [1] 成功: 4 結果: 12/12/20

 カゲオは動じず、 シオの渾身の攻撃を更に間合いを詰めることで回避する。 [MP] 1 〈回避〉 2 [AP/身体] 4 を消費し、 《入身》を使用。

  [4] [3] [3] [5] [4] [3]  成功: 3 結果: 12

 ギリギリで回避成功、そして隠密状態に移行。 カゲオはハルバードを避けながら、 シオの視界から消え去ってしまった。

 「な……しまっ」

 慌ててカゲオを探そうとするシオ。 しかし、ここで行動権は再びカゲオの下に戻り、 シオの行動を許さない。

《フェイズ12 / 行動権: カゲオ》

HPMPINAP(身/精)負傷
シオ33480 / 3無傷
カゲオ24093 / 5無傷

 先ほどの攻防でシオの死角に入り込んだカゲオ、 その勢いのまま、ダガーを突き刺すことに集中する。
 [AP/身体] 3 を消費し、 《フェンサーアーツ》《クリティカル》《スティング》を使って攻撃。

  [5] [5] [3]  成功: 2 結果: 6/8/9

 カゲオはシオに対して隠密状態にあるため、 シオの受動行動は難易度5で判定しなければならない。 しかしそれ以前にそもそももう、[AP]が残っていない。
 そこでシオ、[HP]と[MP]を 4 ずつ消費し、 [AP/身体]を 4 回復させ、 それを使って防御を試みる。

  [4] [5] [2] [2] 成功: 1 結果: 4/4/7

 結果、ダメージは 2 点。 表と照らし合わせると微傷だが、 《クリティカル》の効果でシフトして軽傷となった。

《フェイズ13 / 行動権: サラ》

HPMPINAP(身/精)負傷
シオ27070 / 3軽傷
カゲオ24090 / 5無傷

 カゲオもシオも最早行動不能なため、 次の行動権はアルドが取得した。
 寝たままでは危なくて仕方がないので、 [HP][MP]を 1 点ずつ消費して[AP/身体] 1 点に変換。 それを使って起き上がり、転倒から復帰して行動を終了した。
 この時点で、 これ以上の行動をするキャラクターがいなくなったため、 1ラウンド目は終了となった。

第2ラウンド

HPMPINAP(身/精)負傷
アルド26446 / 2中傷
シオ26577 / 4軽傷
サラ21386 / 6無傷
ヴェンタス36498 / 3無傷
カゲオ24398 / 5無傷

 ラウンドの開始と同時に、 [MP]と[AP]、〈技能〉は全快する。 ただし、負傷に応じて上限には制限がかかり、 また[HP]が減少する。 

 「クソッ、3人がかりでも押されるなんて!」

 「こいつら、戦い方が上手いんさ。 僕らの実力を上手く発揮できないにしてくる」

 「ヘヘッ、いいねぇ。こういう戦いをオレは望んでたんだよ!」

 「……お前の遊びに付き合う気はないぞ」

 「へーへー。ったく、折角いーいところだったってのによ」

 実のところ、 襲撃者にはそれほど余裕があるわけではない。 ギリギリのラインを辛うじて押し切って優位に立っているに過ぎず、 一歩間違えれば大怪我を負っていたのは襲撃者側である。
 そして、 それこそが好ましいと思う戦闘嗜好のヴェンタスと、 仕事を遂行する上での障害としか認識しないカゲオには、 その点で温度差があった。
 ヴェンタスにとって残念なことに、 この戦いは二人が協力しないと成り立たない。 不本意ながらカゲオを無視して 戦いに興じるわけにはいかないのである。
 だから、やることは決まっていた。 サラが戻ってくる前に、目標を奪取しての逃亡である。

《フェイズ1 / 行動権: ヴェンタス》

 2ラウンド目も先手を取るは、ヴェンタスである。
 彼が目論むのは、足止め。 [MP] 4 〈刀剣〉 3 [AP/身体] 8 を消費し、 《遠当》《インペイル》《トルネードスウィング》を使用。 大きく横に振った剣から、二条の衝撃波が アルドとシオを襲う。

 「剣技“刃紋”だ。受け切ってみせろよ」

  [6] [3] [4] [2] [3] [3] [2] [6] [5] [1] [6] 成功: 4 結果: 16/16/25

 アルドは〈盾〉 1 [AP/身体] 6 を消費して《シールドガード》を使用、 シオは〈槍・長柄〉 2 [AP/身体] 7 を消費して、防御を試みる。

  アルド [3] [6] [6] [2] [1] [4] [5] 成功: 4 結果: 8/12/16

  シオ [2] [6] [3] [5] [1] [1] [4] [3] [4] 成功: 3 結果: 16/12/15

 アルドは 9 点、 シオは命中達成値が攻撃側以上になったので『半減』して 5 点のダメージを受けた。 共に、負傷段階の更新はない。

《フェイズ2 / 行動権: カゲオ》

 ヴェンタスが衝撃波を飛ばすや否や、 カゲオはシオを抜き去りて馬車へ向かう。

 「そうはさせない!」

 そうはさせじとハルバードで牽制するシオの移動妨害を、 [AP/身体]7を消費して突破を試みる。
 シオはそれに対し、 [HP][MP]5 点を[AP/身体]に変換した上で妨害をする。

  カゲオ [5] [6] [6] [5] [3] [1] [6] 成功: 5 結果: 20

  シオ [3] [5] [3] [4] [2] 成功: 2 結果: 8

 しかし妨害は失敗。 カゲオはまんまとシオを出しぬいて、馬車へと到達せしめた。
 そして馬車に入り込み、 いざ目標たる中に隠れていたイレーヌを前にしたとき、 異変は起こった。

終結

 「な……! イ……イスリーン……?」

 それまで頑なに口を閉ざし続け、 一言も喋らなかったカゲオ。 その彼が今、 イレーヌの顔を見た途端に激しく動揺し、 何者かの名前と思しき単語を呟いた。
 あまりの様子の激変に周囲も戸惑い、 一時的に戦闘状態が停止する。
 そして、 その事態を引き起こした張本人たるカゲオはいち早く己を取り戻すや否や、 踵を返して走り去った。  「私はこの仕事を降りる」と、ただそれだけをヴェンタスの耳元に言い残して。

 「く……っそ! テメェなに仕事を放棄してんだよぉ! ああ、やめだやめ。こんなのこれ以上、続けてられっかってんだ」

 その後の行動はヴェンタスも素早い。 機を見るに敏な傭兵としては、 勝ち目のない戦いは御免である。 できればもう少し勝負を楽しみたいところであったが、 さすがの彼も3対1では些か以上に分が悪い。 不幸中の幸いにしてカゲオの敵前逃亡があるため、言い訳も立つ。 ここは3人が冷静になる前にケツをまくってずらかるのが最善手である、 と、そう判断した。
 カゲオが去り、ヴェンタスが去れば、残る野盗もいつまでも居やしない。 彼らがいなければ勝つどころから命を繋ぐことすら儘ならないことに気づく端から、 慌てふためきながら逃げ出していった。

 「いったい……何だったんだ」

 後に残されたのは、最初からいた4人のみ。 あまりの事態の急変にイマイチ心が追いついていかない。
 呆然とアルドが呟けば、いかにもどうでも良さそうにシオが返す。

 「さあてねぇ。それより、追う? 今ならまだ追いつけそうなのもいるけど」

 「いや、いいだろ。別に俺たちは戦いたいわけじゃないし」

 「それよりお腹が空いたぞ。ご飯にしよう」

 「……」

 相手が逃げていったのなら、これ以上の戦いは不要。 アルドに確認するまでもなく、それはこの場の全員の総意でもあった。
 サラはマイペースに空腹を訴え、 そしてイレーヌは難しい顔をして何事かを考える。

 「サラはマイペースすぎさね。 さすがに僕は、この場でご飯を食べたいと思わないよ?」

 「むう。じゃあ早く出発しよう」

 「お前ら、少しは緊張感を持てよなぁ……」

 ツッコミを入れるアルドからして、最早すっかり緩みきっている。 良くも悪くも、 これが荒事が日常というほどには染まりきっていない彼らの持ち味なのだろう。

 「イレーヌも、お腹が空いたよな?」

 「……」

 「イレーヌ?」

 「あ……ご、ごめんなさい。ちょっとぼうっとしてました。 こんなところにいつまで居ても仕方ありませんし、早く出発しましょう」

 「さっきの、あの男のことを気にしてるのか?」

 「……はい。なんで、あの人は母の名を知っていたのでしょう」

 それは、この場の誰にも答えようのない質問であった。 その事をイレーヌ自身も理解していたが、 それでも訊かずにはいられなかった。
 そもそも、この事件は最初からおかしい。 お世辞にも人通りの多いと言えぬ道に、 なぜ彼らは馬車用の罠まで仕掛けて待ち構えていたのか。 なぜ、野盗風情が超一流の腕利きを二人も引き連れていたのか。 そしてなぜ、彼らはイレーヌの身柄を要求したのか。
 最後には刺客の一人の謎の行動により、 ますます混迷の度合いが増す。 あるいは、 一番最初の時点、 病気の治療のためにイレーヌを訪ねてきたところから、 何かしらの陰謀が進行していたのかもしれない。

 「何もわからないのに、クヨクヨと考えこんでも仕方ないさ。 まずは町に行こう。 もし、あの連中の背後に何かいるなら、また何かが起こると思う。 でも、俺たちがついてるから安心してくれ。 きっと、君のことは守ってみせるから」

 「……はい、ありがとうございます」

 そう、思考の迷路に入り込んでいたイレーヌを引き上げたのは、 アルドの言葉であった。 心が軽くなった気がして、微笑みながら礼を返すイレーヌ。

 「む、アルドがイレーヌを口説いているぞ」

 「こうやって着々とハーレムを築いていくんだね。 ボクらも気をつけないと危ないよ、サラ」

 「口説いてねえええええええ!!」

 こうして、 森の小道で起こった襲撃事件は幕を閉じた。 しかし、これはまだ、 この後に続く大きな事件の序章にしか過ぎなかった。 そして、 それすらも今後アルドが出会う幾つもの事件の一つでしかなかったのだ。

 アルドの冒険 特別編『森林の襲撃者』──完

次回『町に待つモノ』へ続……きません

戻る