安息のナイトロード
2003/11/09 試作
「あたしの居場所は、どこにもない。ただ、さ迷うだけ…」![]() 自分が他の人間と違うことに気付いたのは、いつだったろうか。 成長の遅い身体、出所のわからない慢性的な空腹感、発作的に襲う飢餓衝動。 日の光に弱く、昼間は屋内から出たくなかった。 それでも、先天的に身体が弱いということで、まだ普通に近い生活ができていた。 でも、あるとき街を襲った恐怖が、その日常を終わらせた。 それはストレートに、吸血花と呼ばれた。 動物の体内に根を張り、血を吸い上げて真紅の花を咲かせる寄生植物。 ツタが能動的に動き、近くの動物に種を植え付けて繁殖する。 それによる負荷は、強靭なミュータントならいざ知らず 並の人間には耐えがたい代物であり、大勢の犠牲者が出た。 母も友人も、近しい人たちは皆いなくなった。 そんな中で、自分だけは平気だった。 最初の頃こそ激痛と共に発熱したが、直にそれは収まった。 後に残ったのは、自己を見失いかねない程の空腹感。 そして未だ身体に寄生したままのその植物はツタを伸ばし、 近くの人間の血を吸い始める。 なんということだろう、その植物は自分の身体と一体化していた。 後で聞いた話によると、細胞レベルで一種の共生状態になっているとか。 基本的には自分の意思で操作できるのだが、 生体の危機においては、防衛本能が表面化するようだった。 その日いらい、自分には安らぐことがなくなった。 自分の身体を、理性を、植物の支配権を維持するために、 今日も血を求めてさ迷う。 いつか、平穏な時を手に入れることを夢見て。
コメント絵師のNAKA氏がノリノリで描いた一品。本当はサンプルにはもっと「普通」の薄いキャラクターを用意するはずだったのに、 これを没にするのは勿体無いとか、男ばかりはバランスが悪いとか (俺が選別すると男ばかりになる)、 世界には萌えが必要(by ZOK)とかいった意見により、 狼君(別のサンプル)が没になって代わりにこっちが本採用となった。 おかげで、設定を考えるのにえらい苦労しちまったよ。 こんなに偏ったサンプルで、本当にいいんだろうか? |