探求のガンマン
2003/11/09
「待っててくれ。必ずいつか、薬を持って帰るから」![]() 狩人の息子として生まれ、狩人として育てられた。 物心がついた頃から他人には感じられない物が感じられ、 そのために誰よりも早く狩りの腕は上達した。 長じたときには、近隣で並ぶ者のない狩人と称されるに到っていた。 狩人としての名声、十分な収入、そして幼馴染の少女を妻に貰い、 幸せの絶頂にいるはずだった。 彼女が病気で倒れるその時までは。 不治の病。診断した医者から、そう言われた。 床にふせった彼女は徐々にやせ細り、赤いふっくらとした頬は青く生気を失い、 艶やかな黒い髪は瑞々しさをなくしていった。 素人目に見ても、そういつまでも保たないことは明らかだった。 そのとき、狩人の間に伝わる、ある噂を思い出した。この世のどこかに、 額に立派な角を持った変異生物がおり、 その角を粉末にして飲むと、どんな病もたちどころに治るという。 必ず帰る。そう約束して旅に出る。 本来あるべきはずだった幸福を、この手に取り戻すために。
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