変異体

 人類が地上への帰還を果たしたとき、そこには新たな人の種が根付いていた。 人は彼らはを、変異体(ミュータント)と呼んだ。

 変異体は種族によって進化の方向性が全く異なり、 一口で変異体と言っても、 その実、種族が違えば別の生物と言っても良いほどの差がある。

 ここでは、変異体の中でも有力な種族について、いくつか例を挙げて説明しよう。

2003/11/24


鬼族

所有能力:異形の肉体, 鬼の腕, 再生

 赤銅の肌を持った巨漢の種族。 平均的な成人男子の身長が190 [cm] 前後という体躯を誇り、 当然、それに相応しい膂力の持ち主たちである。 その恐ろしげな外見から「鬼」と呼称されるようになったが、 別に角が生えているというわけでもなく、 単なる大柄な人間と称して通すことも不可能ではない。

 気性はどちらかというと穏やかであり、あまり争いを好まない。 と言っても臆病というわけではなく、 いざ闘いとなれば非常に勇敢であり、 自分たちの生活を脅かすような存在に対しては一致妥結して闘いに挑む。 縄張り意識や物を所有するという感覚が希薄であり、 他種族に対しても友好的である。 人間の開拓者たちにも好意的で、 積極的に手助けをするケースも多かった。

 これは、彼らの生息地域や生活環境の影響であると言われている。 鬼族は山岳地帯、渓谷地帯などの、厳しい環境下で生活してきた。 そのような環境で生きるために常に互いに助け合う必要があり、 強い仲間意識、連帯感が生まれた。 同時に、鬼族以外に、同じ地域で生活する変異体は現れなかった。 つまり、生存競争のために種族間で争うような状況を経験していないのである。 これらの結果、「そこに住まう者は皆、仲間である。仲間は助けなければならない。」 という発想に至ったのだという。

 以上のような事から、鬼族と人間との関係はおおむね良好である。 鬼たちは無償で開拓者の手助けをしてきたため、 非常に感謝され、その後も交流が続いたのである。

 もっとも、全てがそのように上手くいっているわけではない。 人間の手によって、鬼の一族が滅んだ例もある。 その鬼の一族の棲みかから貴重な資源が発掘できることが判明したため、 欲望に目がくらんだとある人間たちの手によりだまし討ちに会い、 皆殺しにされてしまったのである。 今ではその地には大規模な採掘所が建設され、かつての面影は全くない。 出所不明のある噂によると、全滅したと思われた鬼に生き残りがいて、 人間に対する復讐を誓って潜伏しているという。


狼族

所有能力:異形の肉体, 獣の挙動, 獣人化

 肥沃な草原や森林地帯に棲む種族。 肉食獣のような瞬発力と獣相を持つことから、 狼族と呼ばれるようになった。 高い運動能力と鋭い視覚、嗅覚から、 非常に優れた狩人である。 その能力を活かして野の獣を狩り、 糧としている。

 狩人としての性なのか、 狼族は縄張り意識が極端なまでに強く、 無断で縄張りに進入する者に対しては容赦しない。 狩場は自分たちの物であり、 誰に奪われるわけにもいかないと考えるのだ。 このことからもわかるように、 彼らは排他的で、多種族とも人間ともあまり交わろうとしない。 狼族にとって一番重要なことは、自分たちという群れを守ることなのである。

 狼族の群れは、上下関係よって構成されている。 ボスを中心にそれぞれが役割を持ち、それに従って生活を営むのである。 だから、群れ以外の場所で狼族を見かけることはほとんどない。

 しかし例外もいる。 老いや病のために群れにとって重荷になってしまった者、 精神的な問題で群れに適応できなかった者は、 自ら群れを出るという選択を取る。 そして、一族から離れ、独自のアイデンティティを獲得する者も稀に存在するという。


輝石族

所有能力:異形の肉体, 生体光学兵器, 保護色

 深い森の奥に棲む、華奢な種族。 その額にある宝石のような器官から、輝石族と呼ばれる。

 輝石族は、全長数十[m]にも及ぶエリンの大木の洞を棲家とする。 エリンの木は、根本の辺りに大きな隙間を持つ性質があるのである。 これは、輝石族が自分たちの都合の良いように改造したという説もある。 なぜなら、輝石族は額の器官を通じて、 植物に何かしらの影響を与える能力を持っているからである。

 この額の器官は他にも様々な能力を持ち、輝石族が輝石族たる所以となっている。 植物との共感能力のほか、 微弱ながらも光合成が可能であり、 また、殺傷力のある光線を発して武器とすることもできる。

 しかし、生存のために手に入れたはずの器官が、今、輝石族を危機に追いやっている。 変異体の中でも特異的な能力を持つとして実験材料として狙われ、 また、取り出せば宝石となるために、 欲に目がくらんだ人間の手によって殺されてしまうこともあるのである。

 容易には手をだせない森の奥深くに棲むことと、 保護色によって背景に溶け込む能力により、 まだ十分な数が生き残ってはいる。 しかし、その数は確実に減少の一途をたどっている。


有翼族

所有能力:異形の肉体, 適応進化(天狗の翼), 超感覚(鷹の眼)

 高地に棲む、背中に翼を生やした種族。 空を飛ぶ能力を活かし、険しい崖の中腹などに集落を作る。 そのため、地上を這い回る危険な生物に襲われる心配がない。 そして、狩りをするときは空中から弓矢や投げ槍を使い、一方的に獲物を攻撃できるのだ。

 生活圏が離れているため、人間との接触は少ないようだ。


夜魔族

所有能力:異形の肉体, 夜の王, 吸血鬼

 他の種族に成りすまし、 こっそりと生体エネルギーを吸収して生きる一種の寄生体。 あまり表に姿を現さず、 未だ実体のつかめない謎の種族。

 比較的大規模な集落に紛れこんでは、 そこを餌場とするような生活をしてきた。 固体としては強靭なのだが、 同族と出会う機会が少ないことや、 他の種族からは悪魔として恐れられたことから、 その絶対数は少なかった。

 しかし、現在はその数を増す傾向にある。 それは、人間の都市に棲みつくようになってからのことだ。 都市の人間たちは数が多く、互いに無関心、 その上、無知であり、自分たちのような存在に対して無警戒である。 なので紛れやすく、餌を狩っても正体がばれにくいのだ。


魚人族

所有能力:異形の肉体, 地形適応(安曇のエラ)

 水中に棲む、エラと水かきを持った種族。 皮膚は暗色で厚く、体温を逃がさないようになっている。 海の沿岸部から浅瀬にかけて集落を作り、 魚と採取して生活する。

 肺呼吸とエラ呼吸を切り換えることにより、 水中でも陸上でも行動可能という利点を持つ。 しかしその反面、 水中での身体能力は魚ほどではなく(人とて大概の陸上生物に劣るが)、 陸上で生活するには熱や乾燥に弱いという欠陥もある。

 辺境の方では人間との仲は決して悪くなく、 農作物と魚の物々交換などを行って交流をしている所も多い。 生活圏の差異ゆえに、ある種の安心感があることも良い影響を与えているようだ。 しかし、都市や工場の排水で水質が汚染され、 深刻な対立から人側の一方的な虐殺が行われたところも少なくない。



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