戦闘について
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Hexa Force は戦闘を中心に据えた、戦闘システムとしての色合いが強い。
それだけに上手く戦闘を行えば、
それはより良い緊張感とカタルシスをプレイヤーにもたらす
強力なツールとなり得る。
しかし、その反面、戦闘時におけるGMの負担も決して少ないものではない。
基本的なルール自体はできる限り単純化してあるが、
一人につき一人のキャラクターを操作すればよいプレイヤーと違い、
GMは同時に複数のキャラクターを操作しなければならないことが多い。
その上で時系列の流れが影響してくる Hexa Force のようなシステムでは、
操る人数が増していくごとに加速度的に負担が増してしまうのだ。
ここでは、そういった負担が大きい代わりに強力な魅力を持つ戦闘システムについて、
上手く運用するためのヒントを語ろうと思う。
2009/10/17
雑魚の取り扱い
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雑魚。
雑魚には様々な役割があり、
TRPGにおいて(TRPGに限らないが)外すことができない存在だ。
その役割としては、
戦闘を通じてキャラクターを立たせるため、
緊張感を与えてセッションを引き締めるため、
爽快感を味あわせてその後の試練の厳しさを強調するため、
あるいは戦闘システムの訓練、
などの意味合いがあると思う。
いずれにせよ、
「いかに上手く負けるか」
が、雑魚の運用において重要な点となるだろう。
(注釈:これは、あくまで戦闘で片をつけるべき雑魚に限定した話である。
それ以外のケースについては、雑魚とゆうより障害と称した方が相応しく、
ここでは除外することに)
雑魚の特徴
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GMが雑魚を出して戦闘を行う場合、
雑魚の戦闘時における特徴に留意する必要がある。
その特徴とは、
- 雑魚は統率が取れていない
- 雑魚は士気が低い
- 雑魚は臆病である
- 雑魚は瞬時の判断力が弱い
- ただし優秀な指揮官が付いていれば話は別である
- ただし厳しい訓練を積んでいれば話は別である
- ただし宗教がかっていれば話は別である
といったところだろう。
最も頭に留めておかなければならないのは、
雑魚は己の能力を完璧に発揮できないからこそ雑魚であるという点だ。
その点を踏まえて、次の項で例を示そう。
雑魚の弱さ
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雑魚は決して効率よく戦わない、いや、戦えない。
例えば、
一人に向かっての集中攻撃や、
チャージランクの節約、
インターセプトやカバーリングによる味方フォローといった高度な戦術を取るためには、かなりの訓練と優秀な指揮官を必要とする。
その条件が満たされない場合、
仲間が信頼できないためにフォローに回れず(フォローをしたら自分が危険になる)、
目の前の脅威を取り除く(つまり目前の敵を攻撃する)のに精一杯になってしまう。
それも、訓練を積んでなければ理性的な戦いなどできはしない
(攻撃対象になったらとにかく防御をし、手番が回ってきたら全力で攻撃をする)だろう。
また、
中傷以上の負傷をした状態での戦闘続行ができるのは、
絶対に負けられない環境での戦闘か、
さもなければドラッグを使っているか、あるいは狂信者かだ。
でなければ、普通は逃げるか降伏する。
誰だって死ぬのは怖い。
ましてや、人に使われる兵隊や獲物を捕りにきた獣ならば尚更であろう。
戦う理由がないのなら、わざわざ痛い思いをする必然性がないのである。
他にも、
ギリギリの間合いでのいちかばちかのカウンター攻撃など、まずやらない。
そもそもカウンターのような危険な真似をするためには、
自分の力量にかなりの自信が必要である。
その上で相手の力量を見極めて勝算を考慮し、
失敗の恐怖に打ち勝つ強い精神力がなければならない。
そして、それができるくらいなら、雑魚などやっていないのである。
雑魚の強さ
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前の項で示したように、雑魚の強さはデータによるものだけでなく、
むしろ行動によるところが大きい。
実際問題、データだけを見るのならば雑魚は決して弱くない。
なぜなら、Hexa Force では連携が非常に大きな威力を発揮する。
「シティガード」(P.\pageref{Enemy_Mob})だって、集団で効率の良い戦い方をすれば、
容易にPCを倒し得るのだ。
ただ、ほとんどの雑魚はそれができないのである。
そしてこれは同時に、データを変えずとも雑魚が強くなり得ることを示している。
厳しい訓練を積み、優秀な指揮官に率いられた、戦う動機の強い「シティガード」は、
他のありきたりな「シティガード」よりもはるかに高い戦力を発揮するのである。
まとめ
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- 雑魚は集中攻撃をしない
- 雑魚は全力で攻撃をする
- 雑魚は全力で防御する
- 雑魚はカウンターをしない
- 雑魚はインターセプトをしない
- 雑魚はカバーリングをしない
- 雑魚は一度に5割以上のダメージを受けると逃げ出す
- ただし(以下略)
先にも述べたが、これはPCの能力を引き立たせるための雑魚の法則である。
GMは上手く行動を調整し、見事な負けを演出して欲しい。
それと同時に、そうやって弱さを見せ付けた上で、
ここぞというときに精鋭部隊(ただし同データ)を出すのもいいだろう。
PCはきっと、そのあまりの差異に驚愕すること請け合いである。
何にせよ、TRPGにおいて戦闘とは、ゲーム的であるがゆえに強力な演出となる。
GMとなる方は、何とか上手いこと使いこなして欲しい。
ボスの取り扱い
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ボス戦の雑魚戦と最も違う点は、その目的にある。
ボス戦とは戦闘における勝利のカタルシスを
そのままシナリオクリアのカタルシスに結び付け、
強い達成感などを容易に得ようというものなのだ。
そのために必要な条件とは、
動機付けと恐怖心であろう。
動機付けに関しては戦闘外の技術になるので、ここでは省く。
一方、恐怖心とは、ボスの強さ、
恐ろしさをどれだけPLが肌で味わえるか、ということだ。
それが強ければ強いほど、つまり障害が大きければ大きいほど勝利時に
得られるカタルシスは強く、
シナリオの満足度も高まるというわけだ。
いずれにせよ、「いかに上手く負けるか」
が重要なのは、雑魚戦と変わらない。
違うのは、どれだけボスの強さを実感させるか、という点にある。
ボスのタイプ
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ボスの作り方、戦い方には幾つものパターンがある。
ここでは、代表的と思われる4種について、
その特徴やテクニックについて解説しよう。
強力単体型
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PCと比較して圧倒的に強力な戦闘力を誇るボスを一体だけ用意し、
多対一で戦闘を行う。
ただ一体のキャラクターを操れば済むため、
ボス戦を処理する上では最も
GMの負担が少ない方法である。
その反面、戦闘が単調になりやすく、
また実戦闘力を操作しづらいため、
PCを程よく危地に追い込むのは意外と難しい。
このタイプを使うときは、
少し強すぎるか、という位の気持ちでデータ作った上で、
わざと馬鹿な戦い方(大味で大雑把な攻防など)をすることをお勧めしよう。
そうすれば、PCは最初は苦しみつつも徐々にボスの隙を見抜き、
戦況を好転させるというシチュエーションが自然に再現できるからだ。
強めに作っておくことにより、
PCが有利すぎる場合にはちょっと戦法を変えることで、
いつでも苦しめるられるという利点もある。
単体with部下型
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強力単体型ほどではないにしろ十分に強力なボスを一体だけ用意し、
それに複数の部下をつけて多対多で戦闘を行う。
部下の行動を単純なパターンでルーチン化してしまえば、
数の割には手間は省ける上で、多数の利点を活かせるのが特長だ。
ただし、行動を考える手間は省けても
スタミナやチャージランクの計算の手間は省けないため、
メモに書く事項が多いというのが難点である。
このタイプを使った戦闘で気をつけねばならないのは、
部下の質と量のバランスだ。
例えば、戦闘中に部下が全滅するような事態はあまり好ましくない。
なぜなら、その時点でPC側の戦力が十分ならば、
それで実質的な戦闘は終了してしまうからだ。
基本的には、
PCが部下を押さえる者とボスを叩く者に役割分担し、
ボスが倒された時点で戦闘終了となるのが望ましい形だろう。
(ただし、部下の全滅を勝利条件とするなら話は別である)
これを実現するために最も簡単なテクニックは、
増援という形で部下を増やしつづけることだ。
弱く、容易に撃破できるけれども、
無視がしきれないくらいの部下が後から後からわらわらと出現するのは、
相当なプレッシャーになる。
増援の出現量を便宜調節することで、戦闘バランスも比較的に取りやすい。
あとは程々の所でボスが倒れれば良いのだ。
互角タイマン型
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PCとほぼ互角の力量を持つNPCをPCと同数だけ用意し、
それぞれが一対一の戦闘を行う。
元々、
Hexa Forceは一対一の戦闘を視野の中心に据えて開発したところがあるため、
戦闘の楽しさを味わうには最も優れた方法である。
ただし、一対一は相性問題が強く、
各PCの性質をしっかり把握した上でデータを作らないことには、
一方的な勝負になりかねないということは、
絶対に忘れてはならない。
五分の戦いを演出したいのであれば、
事前に戦闘のシミュレーションを行うくらいはしてもいいだろう。
裏技として、若干、強めに作っておき、
あとは戦闘方法で調整するというやり方もある。
やりすぎるとPLに忌避されるかもしれないが、
少しくらいなら結構、平気なものである。
なお、一対一を同時にやる方法と別々にやる方法があるが、
これはケース・バイ・ケースなのでどちらがいいとも言えない。
ただ、同時にやった方がGMの負担が増えるもののPLの暇な時間は減るので、
可能であれば前者の方が良いだろう。
互角乱戦型
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PCとほぼ互角の力量を持つNPCをPCと同数だけ用意し、
一斉に多対多の戦闘を行う。
これは、最もGMの負担が大きく、最もエキサイティングな方法である。
互角の力を持つ者たちが力を合わせ、五分の条件で
コンビネーションやチームワークでの優劣を競う、
真の意味でのPCたちの全力が発揮できる数少ない機会なのだ。
これで燃えないはずがない。
その代わり、4人ものPC級のキャラクターの能力と現状を常に把握し、
有機的に操らねばならないGMの負担も計り知れないのだが。
また、この方法は、実はバランス調整が最も容易であるという利点もある。
別々の思考で動くPCたちと違い、GMの一つの意思の下に動くボスグループの方が、
はるかに優秀な連携が組めるからだ。
つまり、能力的には五分でも、実質的にはボスの方が圧倒的に強く、
あとはGMが連携に少し手心を加えてやるだけで、
状況に応じていかようにでも戦闘力を変化させられるのである。
運用は大変だが、一度は挑戦してみて欲しい戦闘方法でもある。
まとめ
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いろいろ語ってみたが、ボス戦における本質は最初に述べた通り、
「いかにPLに恐怖を味合わせるか」、
これにつきる。
そのためなら、手段は何でも構わない。
ここでは戦闘システムの使い方の説明であるために、
その有効な利用法を紹介したが、
それにこだわる必要もない。
絶対に負けられないシチュエーション、
強力な動機付け、
あるいは絶望的な状況や時間制限など、
PCを追い込む手法はいくらでもあり、
それらは全て、ボス戦にも応用が効くのだ。
ただ、それらを踏まえた上で、
システム的な恐怖を味合わせることは決して無駄ではない。
前述の要素と組み合わせることができれば、
極めて強力な効果を発揮することは間違いない。
折角のシステムなのだから、是非、有効に活用して欲しい。
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