Dragonia
- ならこんな戦闘ができるぞ!
2009/09/26
-
舞台は入り組んだ、小汚いスラムの裏通り。
対峙する役者は二人。
長大な剣を無造作に構えた長身の剣士と、
ただ黒い衣服をまとっただけの小柄な拳士。
「あんたには用はない。そこを通しちゃあ……くれないんだろうな、やっぱり」
「ああ。ここを通りたけりゃ……って奴だ。簡単だろう?」
舌打ちでもしそうな拳士の問いに、
さも楽しげに獰猛な獣の笑みを浮かべて応える剣士。
緩んだ空気が、徐々に冷え、張り詰めていく。
「最近はつまんねー奴らばかりで退屈してたんだ。少しは、楽しませてくれよ?」
「……後悔させてやるよ!」
「へっ、期待してる……ぜっ!」
言葉を発したときには、すでに踏み込んでいる剣士。
この戦いは守りを目的としたものなれど、
彼の辞書に守りという言葉はない。
恵まれた体躯に、しなやかな関節に、鋭い反射神経。
それらが彼に先の先を取ることを許し、
幾多の勝利を与えてきた。
一挙動で拳士は射程圏内。
まずは様子見から。
小手調べの──それでも十分に鋭いのだが──剣撃が拳士を襲う。
衝撃。
反発。
切った感触はない。
弾かれ、流される剣。
「へぇ……なかなか、おもしれえ技を使うじゃねえか」
剣士の刃は、拳士の──特に武装のしていない──腕によって防がれた。
服が裂け、血が滲んでいるところを見るに決して無傷ではない。
しかし、浅手でしかないことも確か。
普通ならば考えられない事態だが、剣士に動揺はない。
「魔法?いや、違うな。もっと原始的な……単純な魔力の収束で強化した?」
いかにも戦闘馬鹿といった装いで意外にも頭の切れることに、
拳士は内心で舌を巻く。
技のカラクリが見抜かれたことについては、別段どうでもいい。
元より隠す気もないし、大した問題ではない。
それよりも、たった一合のやり取りでそこまで見抜く戦闘センスこそ、
恐れるべきであった。
「ま、どっちでもいいか。さあ、これは受けきれるか?」
内心で戦慄する拳士とは裏腹に、あっけからんと切って捨てる剣士。
そしてそれは、これより訪れる暴風の前兆。
一合、二合、三合。
嵐のような連撃。
拳士はそれを裁き、受け止め、耐える。
手の出す隙のない、一方的な防戦。
体のあちこちが裂け、胴衣を赤く染める。
致命傷には程遠いなれど、それは少しずつ、確実に体力を奪っていく。
攻撃を受けきれなくなったとき、
そのとき拳士は地に伏すことになるだろう。
そもそも、二人の戦闘者としての身体能力や技量の差は、歴然としていた。
片や天性の素質に恵まれ、
命を賭けた戦いを嗜好し、
ひたすら戦場に身を置き続けた者。
片やもう一方は、
魔力こそ人並みはずれて高いものの身体能力は並であり、
日々の鍛錬を苦にしない性格で十分な実力を身につけたものの、
元来、戦闘を嗜好する性質でもなく、
危機に身を置き続けたわけでもない。
そしてその実力差は今、
確かな現実となって現れていた。
類稀なる魔力の運用──闘気法──によってどうにか耐えてきたが、
いずれ限界が来て破綻することは目に見えている。
激しい連撃に、たまらず飛び退く拳士。
しかし、剣士はそれを許さない。
拳士の後退に合わせて踏み込み、
連続攻撃の締めを、
それまでで一番強烈な斬撃を繰り出す。
拳士はこれを、残る全魔力を集中させた両腕により、
辛くも防ぎきった。
力を込めた一撃に、続く攻撃の間が空く。
ここが、限界にして、最後のチャンス。
反撃するにせよ逃げるにせよ、
この機を逃せば、二度と自発的に動くことは適わないだろう。
拳士は、逃げることを決意する。
幸いにして、逃げ足には自信がある。
この最大の隙を見逃さず、全力で後方へ跳んだ。
強化した足による跳躍は、一跳びで大きく間合いを開ける。
後は全力で走れば、追いつける者などそうは居ない。
相手は追いかけてくる様子も見えない。
逃げ切った。
そう、確信した。
「悪いが、ここは逃げさせてもらうぜ」
言い残し、身を翻す。
刹那、殺気が飛来する。
咄嗟、魔力による硬化。
一滴も残さず全力で行使。
突風。
衝撃。
浮遊。
ミシミシと軋む骨。
乾いた音が響く。
吹き飛ぶ体。
地面の感触。
それは、剣が切り裂いた空気の鎌。
そして、そこに乗せられた気の塊。
刀剣でありながら、遠方に届く反則技。
致命打は避けた。
しかし、負傷は骨にまで達し、体力はもうほとんど残っていない。
最早、戦闘続行は不可能。
剣士を確認することもせずに立ち上がり、
残った体力、精神力をフルに注ぎ込んで走る。走る。走る。
「ち、逃げられたか」
特にそれ以上は追おうともせず、
残念そうに、嬉しそうに呟く剣士。
それを尻目に、我武者羅に走る拳士。
剣士と拳士の邂逅は、ここに終わる。
だが、続きはある。
これは、
この後に幾度となく巡り合い、
時には争い、時には共闘する二人の、
最初の戦いだったのだ。
-
- 剣士はサンプルキャラクターの『テンペスト』、
拳士は『竜の末裔』。
4mの距離を開けた状態から戦闘開始。
INは剣士の9に対し拳士が5。
余程のことがない限りは、常に剣士が先手を取れる。
-
- 順当に行動権を手に入れた剣士は、
〈体術〉を1消費して3m前進する。(残り体術1)
これで彼我の距離は2m。
剣士のツーハンデッドは長さ3なので、攻撃は届く。
-
- INで勝っている以上、飽きるまで剣士のターンは続く。
まずはAP/身体を1と〈刀剣〉を3使っての通常攻撃。(残りAP/身体7、刀剣0)
判定の結果、威力ダイスは2となり、以下の攻撃が拳士を襲う。
- 拳士の防御
- 拳士は〈格闘〉を2使って防御。(残り格闘0)
判定の結果、威力ダイスは1。
ここで《闘気鉄拳》を使用。
〈闘気法〉を2消費して防御値に+8。(残り闘気法1)
防御値が攻撃値以上になったので、『半減』が発動。
結果、拳士は1点のダメージと微傷を負った。(残りHP29)
-
- ここから、剣士の連続攻撃が始まる。
AP/身体を1使って通常攻撃。(残りAP/身体6)
判定の結果、威力ダイスは1。
- 拳士の防御
- AP/身体を2使って防御。(残りAP/身体4)
判定の結果、威力ダイスは1。
追加で《闘気鉄拳》を使用。
AP/精神を1と〈闘気法〉を1消費して防御値に+8。(残りAP/精神2、闘気法0)
防御力が上回ったのでノーダメージ。
剣士の連続攻撃 その2
-
AP/身体を1使って通常攻撃。(残りAP/身体5)
判定の結果、威力ダイスは0。攻撃失敗。
剣士の連続攻撃 その3
-
AP/身体を1使って通常攻撃。(残りAP/身体4)
判定の結果、威力ダイスは0。攻撃失敗。
剣士の連続攻撃 その4
-
AP/身体を1使って通常攻撃。(残りAP/身体3)
判定の結果、威力ダイスは1。
- 拳士の防御
- APの節約のため、受動行動を放棄。
《闘気鉄身》を使用、
AP/精神を1消費してこらえる。(残りAP/精神1)
結果、5点のダメージと
微傷(重複したので繰り上がって軽傷)を負った。(残りHP24)
剣士の連続攻撃 その5
-
AP/身体を1使って通常攻撃。(残りAP/身体2)
判定の結果、威力ダイスは1。
- 拳士の防御
- 受動行動を放棄して《闘気鉄身》を使用、
AP/精神を1消費してこらえる。(残りAP/精神0)
結果、5点のダメージを負った。(残りHP19)
剣士の連続攻撃 その6
-
AP/身体を1使って通常攻撃。(残りAP/身体1)
判定の結果、威力ダイスは1。
- 拳士の防御&回避&退避
-
拳士はここで、一旦距離を置くことを試みる。
まずはAP/身体を2使って普通に防御。
威力ダイスは0で失敗。(残りAP/身体2)
これはまずいので、
AP/身体を2使って逆腕による防御を再度試みる。
威力ダイスは1。(残りAP/身体0)
そこから〈回避〉を1消費して回避。
平行してMPを1消費して《疾風》を使用。
威力ダイスは1。(残り回避0、MP5)
回避は成功していない(しようがない)が、
回避と合わせた防御の命中値が攻撃値以上になったので、『半減』が発動。
結果、拳士は3点のダメージを負った。(残りHP16)
ここで《疾風》の効果発動。
MVの5mだけ後退する。(相対距離7m)
-
-
引いた拳士に対して、
剣士は更に踏み込んで間合いを詰める。
〈体術〉を1消費して3m前進。(残り体術0)
これで相対距離は4m。
-
-
連続攻撃の締めとして、前進しながら残った全力を込めて攻撃する。
HPとMPを4消費し、
AP/身体に変換。(残りHP32、MP0)
AP/身体を5使って攻撃。(残りAP/身体0)
判定の結果、威力ダイスは3。
3m前進しながら攻撃成功。
- 拳士の防御
-
今のままでは防ぎきれないので、
《明鏡止水》を使ってMPを3消費、
〈闘気法〉レベルを+3する。(残りMP2、闘気法3)
更にHPとMPを2ずつ消費して、
AP/身体に変換。(残りHP14、MP0)
このAP/身体を2使って防御。(残りAP/身体0)
判定の結果、威力ダイスは1。
追加で《闘気鉄拳》を使用。
〈闘気法〉を3消費して防御値に+12。(残り闘気法0)
防御値が攻撃値以上になったので、『半減』が発動。
結果、1点のダメージを負った。(残りHP13)
-
-
剣士はAPを使い果たしたので、行動権を放棄。
代わりにやっと拳士が行動権を取得。
しかし勝機なしを見た拳士は、後退を始める。
〈体術〉を2使って、
10m後方に移動。(残り体術0)
これで相対距離は11m。
ここでラウンドエンド。
軽傷の影響で、拳士はHPが1減少。
(残りHP12)
-
-
次ラウンド開始。行動権は剣士が取得。
離れていく拳士に対し、
MPを4消費して
《遠当》《斬術》《ヘビーインパクト》を使い、
AP/身体を8と〈刀剣〉を3使っての
追撃を放つ。(残りMP0、AP/身体0、刀剣0)
判定の結果、威力ダイスは6。
攻撃値mまで届くので、問題なく攻撃成功。
- 拳士、渾身の防御
-
AP/身体を6と〈格闘〉を2使っての
全力防御を試みる。(残りAP/身体0と格闘0)
判定の結果、威力ダイスは4。
追加で《闘気鉄拳》を使用。
AP/精神を3と〈闘気法〉を3消費し、
ヘビーインパクトの効果で係数-1されているので
防御値に+18。(残りAP/精神0、闘気法0)
結果、10点のダメージと軽傷(重複したので繰り上がって中傷)を負った。(残りHP2)
-
-
全力攻撃をした剣士。
まだ追いかけることもできなくはないが、
無理せずここで見送ることに。
行動を放棄。
-
-
中傷の効果で転倒しているため、
何はともあれ起き上がらないことには行動できない。
〈体術〉を1消費して立ち上がる。(残り体術1)
-
-
少しでも距離を開けるため、全力で走る。
MPを3消費して《明鏡止水》を使用、
〈闘気法〉レベルが3上昇。(残りMP3、闘気法3)
ここでMPを2と
〈闘気法〉を3使って《闘気開放》、
判定の結果、威力ダイスは2。
続く行動の効果値に+8されることに。(残りMP1、闘気法0)
このラウンドはすでに防御をしているため、全力移動はできない。
HPとMPを1ずつ消費して身体/APに変換。
身体/APと〈体術〉を1ずつ消費して10mの通常移動。
それに強化分を足して18m。(残りHP1、MP0、残り体術0)
相対距離は29mとなり、
街中ということもあって完全に引き離すことに成功した。
これを以って戦闘終了。
戻る
|